訪問看護への転職~気を付けたい6つのポイント
2023.07.06掲載

訪問看護への転職~気を付けたい6つのポイント

 

訪問看護への転職を考えている看護師の方には以下のようなポイントを考慮することをおすすめします。

 

1.訪問看護の理解: 訪問看護は、患者の自宅や施設で直接ケアを提供するという特殊な環境です。そのため、家庭環境や生活習慣を考慮したケアを必要とします。また、一人での作業が多くなるため、自己判断が求められる場面も多く出てきます。

 

2.独立性と柔軟性: 訪問看護師は、患者の自宅に出向いて一対一でケアを提供するため、自主性と柔軟性が求められます。独自の判断をする能力が必要とされます。問題が発生した場合に自分で解決策を見つける能力も求められます。

 

3.コミュニケーション能力: 家族や他のケアプロバイダーと効果的にコミュニケーションを取ることが求められます。また、患者の自宅でケアを提供するため、敏感な家庭の問題や個人的な事情に対する配慮も必要です。

 

4.運転と移動時間: 訪問看護師として働く場合、自家用車で移動することが多いです。そのため、運転が得意でない場合や、長時間移動することに抵抗がある場合は、その点を考慮する必要があります。

 

5.教育と研修: 新たな分野への転職には、新しいスキルと知識の習得が必要です。特に訪問看護では、基本的な看護技術だけでなく、患者の家庭環境やコミュニティの理解も求められます。これらを学ぶための研修や教育の機会があるかどうかを確認することが重要です。

 

6.キャリアパス: 訪問看護師としてのキャリアパスをしっかりと検討し、自分の長期的な目標と合っているかどうかを確認してください。看護師としてのスキルや経験をどのように活用し、成長したいのかを明確にすると良いでしょう。

 

訪問看護への転職は、自分自身のスキルや能力を大いに試す機会となりますが、その分、大きな成長と満足感を得ることができます。これらのポイントを踏まえて、自分にとって最善の選択をすることが重要です。

 

➀訪問看護への理解

訪問看護とは、看護師が患者の自宅に出向き、直接ケアを提供することを指します。これは通常の病院でのケアとは異なり、患者の自宅や施設など、一般的な医療環境外で看護を行う形態となります。

 

訪問看護師は通常、患者や家族、ケアチームと協力して、個々の患者に最適なケアプランを作成・実行します。これには、健康状態のモニタリング、投薬管理、創傷ケア、栄養指導、リハビリテーションサポートなど、さまざまなタスクが含まれることがあります。

 

また、訪問看護師は、患者が安全で快適な自宅環境を維持できるようサポートする役割も果たします。これは、家庭環境の改善、必要な医療機器の設置と管理、家族への介護指導などを含むことがあります。

 

訪問看護師は患者一人ひとりのニーズに対応するため、広範で柔軟なスキルセットが求められます。加えて、自宅訪問では個々の家庭環境と文化、価値観を尊重するとともに、その中で効果的なケアを提供する能力が必要となります。

 

さらに、訪問看護師はしばしば一人で作業を行うため、高い自立性と自己判断力が求められます。問題解決能力やクリティカルシンキングも重要なスキルとなります。特定のケースに対して病院のチームにすぐに相談することができない場合もあるため、自分自身で解決策を見つける能力が必要となることもあります。

 

これらの要素を理解し、それに対応できるスキルや知識を身につけることが、訪問看護への転職を成功させるための鍵となります。

 

訪問看護への理解を深めるためには、いくつかのステップを踏むことが役立ちます。以下に具体的なアクションをいくつかご提案します。

 

  1. リサーチと学習: 訪問看護についての基本的な知識を深めることから始めてみてください。書籍、学術論文、オンラインリソースなどを用いて、訪問看護の役割、スコープ、必要なスキルや資格などについて学びましょう。特に訪問看護の最新の研究やトレンドについて理解することは、この分野が自分にどのように合っているかを理解するのに役立つでしょう。

 

  1. シャドウイング: すでに訪問看護師として働いている人の元で働くことで、現場での具体的な仕事内容や流れを体験できます。これにより、自分が訪問看護の役割に適しているか、または追加的なスキルや知識が必要かを判断するのに役立つ情報を得ることができます。

 

  1. ネットワーキング: 訪問看護の業界に関わる人々とのネットワーキングを積極的に行いましょう。これは、職業に関するリアルな洞察やアドバイスを得るための絶好の機会です。学会、ワークショップ、セミナーなどに参加することで、新たな知識を得たり、自分の疑問や不安に対する答えを見つけることができます。

 

  1. ボランティア活動: 訪問看護に関連するボランティア活動に参加することは、自分のスキルをテストし、訪問看護に対する理解を深めるのに有益な方法です。これは、自宅でのケアに必要なスキルを実際に試す機会を提供します。

 

  1. メンターを見つける: 訪問看護師として経験豊富な人をメンターとして見つけることは、自分のキャリアを指導してくれる貴重なリソースとなるでしょう。メンターからは、訪問看護の業界についての深い洞察や、転職をスムーズに進めるための具体的なアドバイスを得ることができます。

 

  1. 教育とトレーニング: 訪問看護に関連する教育やトレーニングプログラムに参加することで、訪問看護に必要なスキルや知識をさらに深めることができます。このようなプログラムは、訪問看護に関する理論的知識と、具体的な技術的スキルの両方を提供します。

 

訪問看護への転職は、自分自身の能力や適性、専門的なスキルを再評価する絶好の機会です。この過程は自己理解を深め、看護師としての成長を促進するために重要なステップとなります。これらのステップを経て、訪問看護という新たな役割に自分がどのようにフィットするかを理解することができれば、転職の決定がより簡単になるでしょう。

 

②独立性と柔軟性

訪問看護師として働く際には、独立性と柔軟性が重要なスキルとなります。これらは以下のような形で具体化されます。

 

独立性

 

訪問看護師は、自身で患者のアセスメントを行い、ケアプランを立案し、その実行・評価を行うことが多いです。この過程には、臨床判断をはじめとする看護師としての専門的なスキルが求められます。そのため、訪問看護師はしっかりとした臨床知識と経験を持ち、独立して患者のケアを進める能力が必要です。

 

また、訪問看護師は自分でスケジュール管理を行うことが多いです。自己管理能力が必要となり、訪問順序や移動ルート、訪問時間などを計画し、その実行を担当します。

 

柔軟性

 

訪問看護師は多様な患者と接します。患者の健康状態、生活習慣、文化背景などは人それぞれ異なり、それに対応するためには柔軟な思考と対応能力が求められます。

 

また、訪問先で予期しない状況に直面することもあります。急な患者の体調変化、家庭環境の問題、通信設備のトラブルなど、様々な問題が発生する可能性があります。それらに対応するためには、臨機応変な対応力と問題解決能力が必要です。

 

また、訪問看護師は自己の感情管理も必要とされます。時にはストレスフルな状況や感情的な困難に直面することもありますが、そのような状況でも適切なケアを提供するためには、自身の感情を適切に管理し、プロフェッショナルとしての役割を果たす能力が求められます。

 

訪問看護師としての柔軟性は、多様な状況で求められます。以下に、柔軟性が必要とされる具体的な場面の例を5つ挙げてみます。

 

  1. 患者の急な健康状態の変化: 患者の体調が急に変化した場合、訪問看護師は直ちに適切な対応を考え、実行しなければなりません。これには、症状の評価、適切な介入の選択、必要に応じて医師や救急サービスとの連携などが含まれます。

 

  1. 家族の介護スキルや理解度: 患者の家族が介護技術を理解し、適切に実行できない場合、訪問看護師は教育方法を柔軟に調整する必要があります。教える内容や方法、ペースを患者や家族の理解度やニーズに合わせて変更する柔軟性が求められます。

 

  1. 文化的な違い: 患者やその家族の文化的なバックグラウンド、宗教的な信念、食事の習慣などは、看護のアプローチに影響を与えることがあります。そのため、それらの違いを尊重し、その中で適切なケアを提供できるように、自身のアプローチを調整する必要があります。

 

  1. 予期しない家庭環境の問題: 例えば、訪問先の家庭で、家族間の対立や安全上の問題、衛生状態の問題などが発生した場合、訪問看護師はその場で解決策を考え、実行する必要があります。

 

  1. 訪問スケジュールの変更: 交通の問題や前の訪問が予定よりも長引いた場合など、予定していた訪問スケジュールを変更しなければならない状況もあります。そのような場合でも、患者全体のケアを確保するためにスケジュールを再調整する柔軟性が求められます。

 

これらの具体例は、訪問看護師が日々直面する可能性のある状況の一部です。これらの状況に対応するためには、柔軟な思考と行動が必要となります。

 

これらの独立性と柔軟性は、訪問看護師として成功するための重要な要素です。これらを身につけることで、訪問看護師としての業務を効率的に、かつ高品質に遂行することが可能となります。



③コミュニケーション能力

訪問看護師になる際には、様々な人々とのコミュニケーション能力が求められます。以下に具体的なスキルをいくつか挙げてみましょう。

 

  1. 聴き取りと理解力: 患者やその家族からの情報を的確に把握するためのスキルが必要です。これには、相手の言葉を適切に理解するだけでなく、非言語的な情報(表情や身体言語)からも重要な情報を読み取る能力が含まれます。

 

  1. 明瞭な伝達能力: あなた自身の意図を明確に伝達する能力も重要です。これには、適切な語彙を用いて、自分の考えや提案を理解しやすく表現する能力が必要です。

 

  1. 患者と家族の教育: 訪問看護師は患者やその家族に、病状や治療方法、自己管理の方法などを教える役割も果たします。そのため、専門的な情報を一般的な言葉で分かりやすく説明する能力が必要です。

 

  1. エンパシーと対人関係スキル: 患者やその家族との良好な関係を築くためには、他人の視点や感情を理解し、それに対する適切な反応を示す能力が求められます。エンパシーは患者から信頼を得る上で不可欠なスキルです。

 

  1. チームコミュニケーション: 訪問看護師は、医師、他の看護師、ソーシャルワーカー、物理療法士など、多職種からなるチームの一員として働くことがあります。それぞれの職種と効率的にコミュニケーションをとる能力は、チーム全体として最良のケアを提供するために重要です。

 

これらのスキルは、訪問看護師としてのコミュニケーションの基本を形成します。患者のケアを最適化し、患者とその家族から信頼を得るためには、これらのコミュニケーション能力を磨くことが重要です。以下に上記5つのポイントを詳しく解説していきます。

 

1聞き取りと理解力

訪問看護師が患者のケアを適切に行うためには、しっかりと聞き取りと理解する能力が不可欠です。このスキルは以下のような要素を含んでいます。

 

  1. 活動的な聞き取り: これは、看護師が積極的に質問を行い、患者や家族からの情報を得る技術です。患者の症状、感情、懸念事項などを適切に理解するためには、開放的な質問から具体的な質問まで、幅広い種類の質問を適切に使うことが必要です。

 

  1. 非言語的な情報の理解: 言葉以外にも、患者の身体言語、表情、声のトーンなどからも多くの情報を得ることができます。これらの非言語的な情報を適切に読み取り、それをケアに反映することが重要です。

 

  1. 傾聴: 訪問看護師は、患者や家族が話すことを静かに聞くことも必要です。これは、相手の話を中断せず、理解し、反応することで、相手が自分の意見や感情を自由に表現できる環境を作ることを意味します。

 

  1. 丁寧な確認: 患者や家族からの情報を聞いた後、その理解度を確認することも重要です。これは、自分が相手の言葉を適切に理解しているかを確認するために、自分の理解を述べて確認するプロセスです。

 

  1. 忍耐力とリスペクト: 言葉を選ぶのに時間がかかる人や、病気や障害で話すことが難しい人を含む、すべての患者と効果的にコミュニケーションを取るには、時間とリスペクトが必要です。

 

これらの要素は、訪問看護師が効果的な聞き取りと理解を行うための基本的なスキルです。これらのスキルを磨くことで、患者のニーズをより正確に把握し、適切なケアを提供することができます。

 

2.明瞭な伝達力

訪問看護師が患者やその家族、他の医療チームメンバーと適切にコミュニケーションを取るためには、明瞭な伝達能力が必要です。これには以下の要素が含まれます。

 

  1. 明確さ: 伝えたいメッセージは具体的で明確でなければなりません。抽象的な表現や専門用語は、聞き手が混乱したり誤解を招く可能性があります。また、重要なメッセージは頻繁に繰り返すことも効果的です。

 

  1. 適切な語彙の使用: 聞き手の理解度や背景に合わせて、適切な言葉を選ぶことが重要です。特に、患者や家族に対しては、専門的な用語を避け、一般的な語彙を用いることが望ましいです。

 

  1. ノンバーバルコミュニケーション: 言葉だけでなく、身体言語や表情、視覚的な材料(図表や模型など)も伝達の一部です。これらは、特に複雑な情報を伝える際に有用です。

 

  1. フィードバックの要求: 言葉が正しく理解されたかどうかを確認するためには、フィードバックを求めることが重要です。これには、質問を投げかける、相手に説明した内容を再度説明してもらうなどの手段があります。

 

  1. 感情的な調整: 伝達するメッセージは、聞き手の感情状態に適応する必要があります。例えば、患者が不安や怒りを感じているときには、優しく、理解を示すような言葉を選びます。

 

これらのスキルは、訪問看護師が明瞭な伝達能力を持つための基本的な要素です。これらのスキルを磨くことで、看護師は患者やその家族、他の医療チームメンバーと効果的にコミュニケーションを取り、全体的なケアの質を向上させることができます。

3.患者と家族への教育

訪問看護師は、患者や家族に対する教育的な役割も果たします。そのため、専門的な情報を一般的な言葉で分かりやすく説明する能力が必要です。以下に、患者と家族の教育に関する具体的なポイントを挙げてみましょう。

 

  1. 病状の説明: 患者や家族が理解できるように、病状や症状、疾患の進行について説明します。これには、必要に応じて医学的な専門用語を避け、日常的な言葉を使用することも含まれます。

 

  1. 治療計画の説明: 治療の目標、予定されている手順、予想される効果、可能性のある副作用やリスクについて説明します。また、患者が治療に積極的に参加するための戦略も共有します。

 

  1. 自己管理スキルの指導: 患者自身が自身の健康を管理するための技術や方法を教えます。これには、薬の適切な使用、健康的な生活習慣(適切な飲食や運動)、体調変化の監視方法などが含まれます。

 

  1. 必要なリソースの紹介: 社区のサポートグループ、リハビリテーションサービス、精神的な支援、経済的な援助など、患者や家族が必要とする可能性のあるリソースについて情報を提供します。

 

  1. 家族のサポート: 病気を持つ人を支える家族自身も、ストレスや心配事を抱えていることが多いです。家族がどのようにサポートできるか、また自分自身のストレスをどのように管理すべきかなどについてのアドバイスも行います。

 

これらの教育活動は、患者や家族が健康状態を理解し、自己管理するためのスキルを身につけ、適切なサポートを受けることができるようにするために重要です。これにより、患者の生活の質の向上や再入院の予防など、より良いケア結果を達成することが可能になります。

 

4.エンパシーと対人関係スキル

訪問看護師が効果的に患者ケアを提供するためには、高いレベルのエンパシー(共感力)と対人関係スキルが求められます。以下に、これらの重要なスキルについて詳しく説明します。

 

エンパシー(共感力)

 

エンパシーは、他人の感情や視点を理解し、それに共感する能力を指します。これは患者と深くつながり、彼らの体験を理解しようとする心の姿勢です。訪問看護師にとってのエンパシーは以下のような側面を含みます。

 

1.感情的な共感: 患者の感情を理解し、それに対する共感を示すことです。これにより、患者は自分の感情が認められ、理解されていると感じることができます。

 

2.視点取得: 患者の視点を理解し、彼らが何を考え、何を感じているかを把握することです。これにより、患者のニーズや懸念をより正確に把握することができます。

 

3.対応の適応: 患者の感情や視点を理解した上で、適切な対応を行うことです。これには、励まし、共感的な言葉の使用、情報の提供などが含まれます。

 

対人関係スキル

 

対人関係スキルは、他人との関係を構築し、維持するための一連のスキルを指します。訪問看護師にとっての対人関係スキルは以下のような側面を含みます。

 

1.コミュニケーション: 明確かつ効果的なコミュニケーションを行うことは、患者や家族、他の医療専門家との関係構築に不可欠です。

 

2.信頼関係の構築: 患者やその家族との信頼関係を構築し、維持することは、効果的なケア提供にとって重要です。これには、誠実さ、信頼性、敬意を表すことなどが含まれます。

 

3.チームワーク: 医療はチームで行うものであり、他の医療専門家と効果的に協働する能力も重要です。これには、共有目標に向けての協力、互いの役割と専門知識の尊重、効果的なコミュニケーションなどが必要です。

 

これらのエンパシーと対人関係スキルを磨くことで、訪問看護師は患者やその家族から信頼を得ることができ、より効果的なケアを提供することが可能となります。

5.チームコミュニケーション

訪問看護師として、患者のケアに関与する他の医療専門家とのチームワークとコミュニケーションは極めて重要です。それぞれの専門家が情報を共有し、一緒に患者のケア計画を作成・実施することで、最高のケアを提供することが可能になります。以下に、チームコミュニケーションにおける具体的な例を挙げます。

 

  1. ケースカンファレンス: これは医療チーム全体が集まり、患者の状態やケア計画について議論する時間です。訪問看護師は、自身が見聞きした患者の状況や変化、行ったケアの結果等を共有し、他の専門家の意見や提案を受け入れる場です。

 

  1. レポートの共有: 訪問看護師は、訪問後の患者の状態や行ったケアの詳細をレポートにまとめ、必要に応じて医療チームと共有します。これにより、他のチームメンバーは訪問看護師が確認した患者の状態を把握することができます。

 

  1. 緊急時の連絡: 患者の急な体調変化やケアに関する問題が発生した場合、訪問看護師は直ちに医療チームの他のメンバーに連絡を取り、適切な対応を協議します。

 

  1. 相互学習: 訪問看護師は、他の専門家から新たな知識やスキルを学ぶ機会を持つこともあります。これはフォーマルな研修会だけでなく、日々の業務の中での情報交換や共有によるものです。

 

これらの具体的な例からわかるように、訪問看護師としてのチームコミュニケーションは、情報の明確な共有、相互の理解と尊重、協力的な問題解決などを通じて、患者に最適なケアを提供するために不可欠なスキルです。

 

④運転と移動時間

訪問看護師としての仕事は、一日の大部分を患者の家を訪れるために移動する時間に費やすことが多いです。それは、一つの訪問先から次の訪問先へ移動する時間、運転中に発生する可能性のある交通の問題、運転に関連するストレスなど、日々の作業スケジュールと労働時間に大きな影響を与える要素です。

 

まず、運転について考えてみましょう。訪問看護師として働くためには、一般的に運転免許が必要となります。また、安全な運転能力だけでなく、地理的な知識も必要とされます。新しく訪問するエリアの地図を読む能力、ナビゲーションシステムの使用方法、さらには患者の住むエリアの一般的な交通パターンや混雑状況について理解しておくことは大切です。特に都市部では、混雑時間を避けてルートを計画することが必要になるかもしれません。

 

次に、移動時間です。一日の業務の中で、訪問看護師は複数の患者を訪問することが多いです。そのため、一つの訪問先から次の訪問先への移動時間は、日々のスケジュールを作成する際に考慮すべき重要な要素です。移動時間が長ければ、それだけ一日の中で訪れることができる患者の数が減り、作業効率が下がる可能性があります。したがって、訪問スケジュールを効率的に作成するためには、患者の住所と予定されている訪問時間を元に、最適なルートを計画することが求められます。

 

これらの点から考えると、訪問看護師にとっては、運転と移動時間が業務の重要な一部であり、これらを効率的に管理する能力は非常に重要です。転職を考えている方は、自身がこのような状況で働くことに対して十分な準備と理解を持っているかどうかを確認しておくべきでしょう。

 

⑤教育と研修

訪問看護師として働く際、医療の知識や技術はもちろん重要ですが、それだけでは十分ではありません。患者の家庭でケアを提供するための特殊なスキルや知識、その地域社会のリソースについての理解、さらには独立して作業を行うための自己管理能力など、訪問看護師には特定のスキルセットが必要とされます。これらのスキルを身につけるためには、適切な教育と研修が必要となります。

 

教育と研修について考えるとき、まず始めに考慮すべき点は、訪問看護の雇用者が提供する研修プログラムの内容と質です。具体的には、新しく訪問看護師として働く際には、以下のような内容の教育・研修が提供されることが重要です。

 

1.訪問看護の基本: 患者の家庭でのケアについての基本的な理解、プライバシーと機密性の考え方、地域社会のリソースの認識、ホームケアの規制や方針についての教育が含まれます。

 

2.クリニカルスキルの強化: 患者の状況に応じて、特定の医療技術や手順の再教育やスキルアップが求められる場合があります。たとえば、特定の医療機器の使用方法、痛みの管理、慢性疾患のケアなどです。

 

3.コミュニケーションと対人関係スキル: 患者やその家族との効果的なコミュニケーション、問題解決スキル、エンパシーや対人関係スキルなどの非クリニカルなスキルも重要です。

 

訪問看護師として働くためには、これらのスキルを磨き、継続的に学び続けることが求められます。また、働きながらさらなるスキルアップを目指すためには、自己学習の時間を設けたり、専門的な研修会やセミナーに参加したりすることも重要です。

 

訪問看護に転職を考えている方は、自身がこれらのスキルを磨くための教育と研修の機会を持てる環境で働けるかどうかを確認しておくべきです。そのためには、求人情報を確認する際に、教育・研修の内容やサポート体制などについて詳しく調べることが有益です。

⑥キャリアパス

訪問看護師としての職を選ぶ際に、一つ重要な考慮点となるのがキャリアパスです。キャリアパスとは、個々の看護師が自分の将来の職業的進展を計画し、そのためにどのようなスキルを習得し、どのような経験を積むべきかを示すものです。

 

訪問看護師としてのキャリアパスは多様で、個々の看護師の専門的な関心や目指す目標によって異なります。訪問看護師として経験を積んだ後、看護師はさまざまな進路を選ぶことができます。たとえば、専門的なスキルや知識を深めるために特定の領域に特化した訪問看護師になること、看護師教育者として新人看護師の指導に関与すること、訪問看護サービスの管理職やリーダーに進むことなどが考えられます。

 

1.専門分野への進出: 特定の領域、例えば糖尿病管理、心臓ケア、小児ケア、老人ケアなどに深く携わりたい場合、その分野に特化した訪問看護師となる道もあります。そのためには、その領域に関する深い知識と経験を必要とし、追加の認定を取得することも求められることがあります。

 

2.教育者としての道: 看護師の指導や教育に情熱を感じる場合、教育者としてのキャリアを追求することもできます。新人看護師の指導や研修プログラムの運営、現場でのコーチングなどを行います。

 

3.管理職への道: リーダーシップスキルを持つ看護師は、訪問看護サービスの管理職を目指すこともできます。これにはケアコーディネーター、チームリーダー、訪問看護サービスのマネージャーなどが含まれます。

 

これらのキャリアパスを追求するためには、それぞれ異なる追加の教育やスキル、経験が必要となります。そのため、訪問看護師として働くことを考えている方は、自分のキャリア目標を明確にし、それを達成するために必要なスキルや経験を習得できる環境で働くことが重要です。また、雇用者がキャリア開発を支援するための教育や研修、メンターシッププログラムを提供しているかどうかも重要なポイントとなります。

 

まとめ

訪問看護師として働くことは、多くのやりがいを感じることができる仕事です。その一つに、患者一人ひとりと長期間にわたり深い関係を築くことが挙げられます。病院での看護師と違い、訪問看護師は患者の自宅で直接ケアを提供します。その結果、患者の日常生活に深く関与し、その生活環境や社会的状況をより深く理解することができます。このような深い関わりが、看護師自身の満足感を高め、また患者の生活の質を向上させるためのケアの改善につながります。

 

また、訪問看護師として働くことで、一人ひとりの患者の独自のニーズに対応し、個別化されたケアを提供することができます。これは、クリニカルなスキルや知識を最大限に活用し、病状や病歴、家族の状況などによって変わる患者のニーズに対応することを可能にします。この柔軟性と個別化は、看護師が自身の知識や技術を最大限に活用するとともに、患者に対して最高のケアを提供する満足感をもたらします。

 

さらに、訪問看護師は、患者が独立した生活を維持し、可能な限り自宅でのケアを続けることをサポートします。これには、患者や家族への教育やケアの調整、社会サービスへの接続などが含まれます。この役割を果たすことで、看護師は患者の生活の質を向上させ、家族の負担を軽減するために直接的な影響を与えることができます。これは、患者と家族から感謝の言葉を直接聞くことができるという、訪問看護師としての特別なやりがいをもたらします。

 

以上のように、訪問看護師として働くことは、深い人間関係の築き、個別化されたケアの提供、患者の生活の質の改善というやりがいを感じられる仕事です。これらは、看護師が自分のスキルや知識を活かし、患者とその家族の生活に直接的な影響を与えることができるという、看護職としての根本的な満足感につながります。