メディカルコンシェルジュとは|ブランディングで選ばれる病院へ
2023.03.31掲載
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メディカルコンシェルジュとは|ブランディングで選ばれる病院へ

 総合病院などでは、メディカルコンシェルジュの配置が進んでいます。メディカルコンシェルジュとは、医療機関における接遇のスペシャリストです。大きな役割のひとつが患者に安心感を与えること。ただでさえ不安な患者に寄り添い、スムーズな受診につなげます。  ひと昔前の病院は、待たずとも患者は来院しました。現在でも病院は混雑するイメージですが、昔と違うのは「患者が病院を選ぶ」ようになったこと。対応がきつかった。予約しているのに何時間も待たされた。このような、患者や家族にとっての不愉快な出来事は、すぐに口コミで流される時代です。病院が生き残るためには適切な接遇が欠かせません。

 メディカルコンシェルジュを配置することで接遇の質が向上し「この病院といえばこの接遇」というブランディングに成功した例もあります。これは経営上でも大変大きな意味を含むのです。

 

▶▶▶目次
1.メディカルコンシェルジュとは
2.メディカルコンシェルジュはなぜ必要なのか
3.メディカルコンシェルジュの業務内容
4.メディカルコンシェルジュに向いているひとは?
5.メディカルコンシェルジュを配置するメリット
6.メディカルコンシェルジュに資格は必要?
7.メディカルコンシェルジュとしての働き方
8.まとめ



メディカルコンシェルジュとは

 「コンシェルジュ」はフランス語が語源で、アパートの管理人や守衛をさしています。現代では高級ホテルやマンション・空港など、あらゆる場所でコンシェルジュを見かけるようになりました。いずれも利用者の要望に応えるプロフェッショナルです。
 「メディカルコンシェルジュ」はその名の通り、病院内でのお世話役です。患者の視点にたち、彼らが何を求めているのかを理解し、その目的を達成するお手伝いをします。対象者は患者に限りません。付き添い人・見舞客・業者など、病院を訪れるすべてのひとにとってエキスパートな存在なのです。 患者の効率的な受診から院内改善の提案まで。メディカルコンシェルジュは医療機関の接遇のスペシャリストであるとともに、人間関係の潤滑油ともいえるでしょう。

メディカルコンシェルジュの業務は下記のようなものです。

  • 受付・誘導
  • 診察・検査の説明と予約
  • 院内巡回
  • 院内サービスの案内
  • 医療機関選定のアドバイス
  • 会計
  • 診療報酬請求事務
  • 問い合わせの対応
  • 院内改善のための提案

※病院により仕事内容は違います。

 

メディカルコンシェルジュはなぜ必要なのか

 メディカルコンシェルジュの接遇は来院者のためにあります。しかもその接遇で来院者が満足を得られれば、病院全体が好循環に機能します。

患者の不安を和らげる

 病院には、ただでさえ病状や経過に不安を抱えているひとがやってきます。大きな病院では、不安のなかでまず自分の行き先を探さなければなりません。特に初診時は、慣れない場所で迷った経験を持つひとも多いでしょう。採血や検査のたびに移動が必要で、途方に暮れる高齢者を見かけることもあります。

 このような病気以外の不安や不満を解消し、スムーズに診察や検査を受けてもらうこと。患者の困りごとを解決できるサービスが必要、という認識が生まれました。

患者の視点からみた医療サービスの提供ができる

 ひとは立場が変わると見える景色が変わるものです。医療機関には多職種の職員がいますが、それぞれ自分の仕事に手一杯です。彼らが「病院内のここを変えたらよくなるのに」と気づいても、日々の業務に流されてしまうでしょう。患者の視点で病院内をみる立場のメディカルコンシェルジュは、気づいた改善点を院内で提案します。サービス向上を繰り返し、病院全体の評価を高めていきます。

医療にも接遇を求められる時代背景

 ひとが病院を選ぶとき、第一条件は質の高い医療でしょう。ですが昨今は、医療にも接遇を求める時代になっています。インターネット上では簡単に口コミが広がります。特に接遇がよくない評判がたてば、わざわざそんな病院に行こうと思わないのが人間の心理でしょう。病院の選択基準に「対応のよさ」が入っていても不思議ではありません。

メディカルコンシェルジュの業務内容

 メディカルコンシェルジュの業務内容は多岐にわたります。病院により違いはありますが、代表的なものを紹介します。

患者への案内業務

 各種案内や説明を通して患者の疑問や不安を解消していきます。

受付・案内

 総合案内のカウンターは疑問を解決したいひとが真っ先に目指す場所で、いわば「病院の顔」です。特に初診時の患者は緊張するものです。初めての来院でも患者が安心してスムーズに受診できるようサポートします。
 自動再来受付機では、まごつく高齢者が多いのも事実です。この操作案内から次のセクションまでの誘導、待ち時間の確認などは、大切な業務のひとつです。また、介助が必要な患者には診療科や検査室まで付き添います。車椅子での導線をお伝えすることもあります。
 メディカルコンシェルジュは、検査部門など専用窓口に配置されることもあります。主な仕事内容は検査の受付や問い合わせの対応です。検査内容の説明・必要書類の準備もします。

検査等の予約・確認・説明

 診療や検査を予約します。内容をわかりやすく説明し、持ち物や注意点などを伝えます。当日には受付し、絶食などの注意点が守られているか確認する役割もあります。そのほか電話応対などのカスタマーサポートも業務になります。

健康診断の手配

 受診者の予約管理、当日の案内や付き添いなど。必要な書類の事前発送なども含みます。

医療費や保険制度についての説明

 医療費について相談にのります。長期入院の場合など、費用がいくらかかるのか? また医療保険は適用できるか? など不安は尽きないものです。
 またセカンドオピニオンに関する相談を受け付けている病院もあります。セカンドオピニオンを希望する患者や家族に、その可否や予約管理・必要書類の説明などをするのもメディカルコンシェルジュの仕事です。

病院内外・周辺施設の案内や手配

 入院・駐車場の案内から宿泊施設の案内・タクシー手配まで、来院者が必要とする情報は病院内外にあります。求められる内容が周辺施設に及ぶケースもあります。

病院内の事務

 クリニックでは診療報酬請求事務などをはじめ、事務的な作業を兼務する場合が多いようです。

ラウンド業務

 病院内を巡回しながら声かけをし、困っている患者を案内・誘導します。また環境整備にも気を配ります。

巡回業務

 院内を巡回し、困っている様子の来院者に積極的に声をかけます。ニーズを把握し、素早い状況判断が必要なこともあります。声をかけやすい雰囲気作りも大切な要素です。

院内の環境整備

 資料や記入書類を整理し補充します。掲示物・備品・設備のチェックなど、病院内の環境にも目を配ります。

院内外の情報共有

 院内外と情報を共有します。医者・看護師など院内での情報共有は、患者のスムーズな受診に欠かせません。他医療機関との連携は、地域医療のネットワーク構築に貢献します。

各部門との連絡調整

 医師や看護師のサポートとして、診察前に患者の必要なデータを準備します。受診前のヒアリングでは、患者の本音を引き出す役割もあります。緊張したままでは伝えもれや聞き忘れが生じるので、患者の気持ちをほぐすのは大切なのです。ヒアリング内容を医師や看護師に伝え、患者をフォローします。また診察室から検査室へなど、移動の際にも情報もれや間違いがないよう気を配ります。

情報から院内の改善へつなげる

 日々患者と接して見えてくる改善点を提案します。たとえば待合室のレイアウトひとつにしても、そこに座って待つことがない病院関係者には気づかない点があるものです。患者視点で疑問や要望を分析し、病院内の改善につなげます。気づき・提案・改善の繰り返しで、結果として選ばれる病院にしていきます。

地域の医療機関との連携

 メディカルコンシェルジュの業務には、医療機関選定のアドバイスが含まれる病院もあります。系列病院や他医療機関と連携をとり、ネットワークを活用して最適な医療がスムーズに受けられるよう体制を整えます。
 また医療機関同士や介護など他職種との連携は、地域包括ケアシステムの構築に欠かせないものとなっています。

メディカルコンシェルジュに向いているひとは?

 メディカルコンシェルジュは接遇のプロフェッショナル。接遇とは「おもてなしの心をもち相手に接すること」です。基本的な医療の知識は必須であり、臨機応変な対応力が求められます。下記に当てはまる要素が多ければ向いているといえるでしょう。

ひとと接することが好き

 初対面のひととのコミュニケーションに抵抗がないこと。自然な会話で患者の緊張をほぐす役割があります。快適に過ごしてもらうには、笑顔で接するのも大きなポイントです。
 メディカルコンシェルジュにはホスピタリティ精神が必要です。相手の求めに応じるのはもちろんですが、それ以上に「こうすればもっと助かるのでは? 喜ばれるのでは?」と常に考える姿勢が大切です。「誰かを喜ばせたい」という気持ちを持っているひとなら、意欲的に仕事ができるでしょう。期待以上の対応で喜ばれることが患者のリピートにつながります。

身だしなみとマナー

 清潔感のある身だしなみが大切なのはいうまでもありません。病院の基準を守りましょう。身だしなみを整えることやマナーを守ることは、相手に対する思いやりです。

問題を解決しようとする姿勢

 求めに対して基本的にNOといわないのがコンシェルジュです。とはいえ、たとえ正しい知識を持っていても、質問すべてに答えられるとは限りません。そんなとき、わからないことがあれば調べたり他部門に問い合わせるなど、問題を解決しようとする姿勢がとても大切なのです。その意味では、情報収集を苦としないひとが向いています。医療に限らず広い分野に興味や関心をもてるとよいですね。老若男女さまざまなひとを相手にするとき、トリビアは助けになります。
 またメディカルコンシェルジュは、時として忍耐力が問われる場面もあります。プロフェッショナルとして毅然とした態度がとれることも必要でしょう。同時に、嫌なことがあってもあまり思いつめず、流せると自分が楽ですね。

相手に寄り添える

 相手に共感し、小さな変化に気づけるひとが向いています。聞かれたことにだけ答えるのではなく、心情を汲みとり柔軟な対応ができると喜ばれます。病院は高齢者が多い場所です。初めての大きな病院は移動だけでも大変ですし、近年のIT化に困っている高齢者も多くいます。
 メディカルコンシェルジュが寄り添う心を持っていれば自然に「なんとか解決しよう」という姿勢になるでしょう。否定せず傾聴できる。そのような対応が求められます。

外国語が話せる

 日本における在留外国人数は296万人以上(令和4年6月末時点)。地域差はありますが、日本に在住する外国人は増え続けています。そしてコロナの終息に向け、海外からの旅行者も増加してきました。
 少し古い調査ですが、文化庁の「日本語に対する在住外国人の意識に関する実態調査」というものがあります。そのなかに「日本語が十分できないため困ったり嫌な思いをした場面」を問う項目がありました。10項目のなかの選択制ですが「病院」は最上位です。21.3%の在留外国人が困ったり嫌な思いをしたことがある、と回答しています。

 この結果からみても、メディカルコンシェルジュに語学力があれば、多くの外国人を助けられることがわかります。医療機関で言葉が通じないと医者は正しい診断が下せず、適切な治療ができません。医療過誤や未払いなどのトラブルを防ぐためにも、語学力のあるメディカルコンシェルジュがますます求められるでしょう。

参考:令和4年6月末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁

参考:日本語に対する在住外国人の意識に関する実態調査 | 文化庁

手話ができる

 語学力と同様、手話ができるメディカルコンシェルジュも貴重な存在です。聴覚に障がいのある患者に手話で対応できれば、意思疎通がぐっとしやすくなります。聴覚障がいをもつ患者がうまく症状を説明できなかったり、診療で正確な説明が受けられないなど、医療の現場には課題があります。筆談の手間や誤解を防ぎ、大幅なタイムロスを解消するためにも、手話ができる人材は必要です。

メディカルコンシェルジュを配置するメリット

 病院がメディカルコンシェルジュを配置するまでには労力がいります。人件費を捻出し、機能的に動かせる位置づけを探り、病院内のレイアウト変更も必要になるでしょう。それにもかかわらず、なぜメディカルコンシェルジュは増えているのでしょうか。配置するメリットをご紹介します。

スムーズな受診で患者の滞在時間を短縮

 初診の患者は規模の大きい病院に圧倒され、迷うものです。自動再来受付機も病院側の負担が軽減されればよいのですが、高齢者にはハードルが高くなっています。結果、誰かがいつも再来受付機の周りにスタンバイしている状態です。メディカルコンシェルジュは、来院者が知りたいことを気軽に聞ける存在。案内・確認・説明・誘導を一手に引き受けます。事前に各種手続きの代行や手配をし、スムーズな受診への導線を作るため、病院での総合的な滞在時間を短縮できるのです。

患者の余計な不安を解消

 体調が悪い。診察や検査の結果が不安。患者やその家族は不安を抱えて来院します。病気以外の不安材料をできるだけ解消するのがメディカルコンシェルジュの役目です。高齢者や障がい者は病院内の移動だけでも不安なもの。総合案内のカウンターから全体を見渡す、または院内巡回により困っている患者に積極的に声をかけていきます。入院時には病棟の案内・共用施設や設備の使用方法までレクチャーします。
 また、医療費の相談ができる病院もあります。特に長期入院の場合など、医療保険の範囲を確認し、だいたいの費用が見積もれるだけでも不安は払拭されるものです。入院や手術時に提出する書類も数種類あり、それぞれの意味を確認しながら準備しなければなりません。同意書など必要書類の説明・記入のしかたなども、メディカルコンシェルジュが一緒に進めていきます。疲弊している家族に対しても不安を和らげる存在になっています。

医師や看護師の負担を削減

 事前にメディカルコンシェルジュがヒアリングした内容を、医師や看護師に伝えます。その情報により、診察時には患者の状態がわかっているため、流れがスムーズになります。その分診察に時間をかけられるので、患者は急き立てられるような気持ちにならず、満足度があがるのです。負担が軽減されると余裕が生まれ、各自が丁寧な対応になっていきます。
 メディカルコンシェルジュの存在は好循環を生み、多忙な医師や看護師の離職抑制にもなります。

業務の効率化

 メディカルコンシェルジュは医療行為以外のサービス提供を担います。そのため、各担当者は自分の業務に専念でき、業務効率がよくなります。他部署とまめに情報共有するため、部署同士が自然に一体感を築いていけるのです。メディカルコンシェルジュはその接遇力で、職場内のコミュニケーション作りにも貢献しています。

患者の満足度の向上

 患者の視点から改善を重ねていけば、患者の満足度があがっていきます。不満な点を修正してくれるのは発信者の声が届いている証拠。改善されれば嬉しいものです。患者の声が紹介元の医療機関に届けば、そちらからの紹介リピートも発生します。自分の患者には喜ばれる病院を紹介したいですよね。このように「選ばれる病院」としてブランディングに成功すれば、経営の安定と好循環が望めるでしょう。

メディカルコンシェルジュに資格は必要?

 メディカルコンシェルジュになるために必要な資格や業務経験は特にありません。しかし、最低限の知識を持っている方が優遇されやすいでしょう。医療機関への勤務経験や他業種のコンシェルジュ経験などは、即戦力として活かせる要素です。
 メディカルコンシェルジュの民間資格はいくつかあります。取得すれば接遇のスペシャリストとしてアピールできますし、採用側の目安になるでしょう。また、すでに医療関係に勤務しているひとがスキルアップのために資格を取得しています。医療事務従事者や、病院内で接遇の指導役にまわるひとに取得してもらう病院もあります。資格手当が得られれば収入面でもアップしますね。

メディカルコンシェルジュの資格

 メディカルコンシェルジュは民間資格であり、いくつかの団体が主催しています。
「メディカルコンシェルジュ(MC)|日本医療コンシェルジュ研究所」や「ホスピタルコンシェルジュ|技能認定振興協会」などがあります。いずれも3〜1級にわかれており、レベルに合わせた受験が可能です。
 学科試験は資料の持ち込みが可能で、調べながら受験できます。3級程度であれば経験がなくても合格しやすいでしょう。医療機関の知識やコミュニケーションスキルなど基本的な内容で、学科試験のみです。これが2級〜1級となると難易度が上がります。学科試験の内容も深くなりますが、ロールプレイングによる実技試験が加わり、合格率がぐっと下がります。

勉強方法

 医療機関での接遇や専門知識を学びます。基本的には問題集を繰り返し解き、苦手分野を克服しましょう。一般の医療事務系のテキストなども含めれば、学科を独学で勉強するのも可能です。ただし独学の場合、自分で何から何まで調べなければなりません。わからないことを聞ける環境もなく、自分の勉強方法が合っているのか不安になることもあるでしょう。
 受験する試験内容に沿った通信教育もありますので、受講するのもひとつの方法です。「メディカルコンシェルジュ(MC)」は講習会と認定試験がセットになっています。「ホスピタルコンシェルジュ」を受験するなら専用の通信講座が便利です。
 いずれにしても、勉強や認定試験にはある程度の費用がかかります。資格を取得すると決めたら自分のなかで期限を決め、それに合わせた勉強法を選択するのが望ましいと思います。

メディカルコンシェルジュとしての働き方

 メディカルコンシェルジュとして採用されるには、有資格者のほうが一目瞭然でアピールできます。しかしながら、笑顔や人柄が重視される職業であるのも確かです。医療業界が未経験でも基本的なPC操作ができれば応募できたり、接客や販売の経験を重視するクリニックもあります。事務系の知識は一から教えてもらえる募集先もあります。
 ある程度の向き不向きはありますが「メディカルコンシェルジュとして働くうちに接遇が身についてくる」というスタンスでも受け入れてもらいやすい職業です。雇用形態もさまざまで、ライフスタイルに合わせた働き方が可能です。

雇用形態

 正社員(正職員)・契約社員・派遣社員のほか、シフト制のパートやアルバイトで働くこともできます。勤務年数や経験を重ねた後、正社員に登用する制度を設けている病院もあります。基本的に患者の在院時間に効力を発揮する仕事なので、残業も少なめの傾向です。仕事とプライベートのラインをひきやすいでしょう。

勤務先

メディカルコンシェルジュとしての勤務先はさまざまですが、主として下記のようなところに配置されています。

  • 総合病院
  • 各種クリニック
  • 健診センター
  • 検診センター

 勤務先により特化したスキルが必要な例もあります。例えば、メンタルクリニックでは心理カウンセラーの資格保持者を求めていたり、高度な接遇を望むクリニックでは応募条件がホテルの接遇経験であったりします。リニックでも患者の満足度を重視し、メディカルコンシェルジュを配置するところが増えてきました。しかし、受付業務や医療事務を総称して「メディカルコンシェルジュ」と呼び、募集をかけているクリニックもあります。また美容外科などでは患者のヒアリングからプランの提案など、営業的な要素をもつ働き方もあります。仕事内容をよく見極め、自分の希望や今後の目標と照らし合わせた選択が必要でしょう。

スキルアップ

 メディカルコンシェルジュは、基本的に未経験でも入り込みやすい職種です。そこからのスキルアップはどうすればよいでしょうか。

上級の資格にチャレンジする

 どんな資格にしろ取得を目指すのは「その分野の知識を持っている」ことを証明したいからですね。メディカルコンシェルジュとしてスキルアップするなら、上級資格にチャレンジするとよいでしょう。上級になるほど合格率は下がりますが、取得できれば難関を突破した証明になります。コンシェルジュとしての業務以外に、指導役などで活躍の場を広げるチャンスです。

診療科に特化した資格を取得する

 少数の診療科に特化したクリニックでは、メディカルコンシェルジュとして働きながら専門知識を学べるところもあります。人材を育てようという意識の職場はバックアップ体制がしっかりしており、研修制度も充実しています。メディカルコンシェルジュと専門職の兼務を目指すことでスキルアップが可能です。

勤務先の選び方

 総合病院のオープニングスタッフなどは大量採用しますので、間口が広い傾向にあります。接遇・医療事務の両方が未経験でも入りやすく、人間関係が築きやすいメリットがあります。
 総合病院には多種多様の来院者がありますが、患者のタイプが絞られる病院もあります。例えば受診者のメインが高齢者である場合や、その反対の小児科。メンタルクリニックや美容外科などです。患者のタイプで接遇も変わります。シミュレーションしてみる、疑問点は確認するなど、そこで働いている自分をイメージしてみてください。
 最低限の福利厚生はチェックしましょう。独自の福利厚生や研修制度を提供しているクリニックもあります。社会保険加入・制服貸与・定期健康診断のほか、インフルエンザ予防接種や人間ドックの補助など、病院ならではの福利厚生も目立ちます。知名度などにとらわれすぎず、自分にとって働きやすい環境を基準にするとよいでしょう。

まとめ

 現代は患者が病院を選ぶ時代です。いくら医療技術に長けている病院でも、素っ気ない態度や思いやりのない返答を繰り返せば、いずれひとは去っていきます。
 AIが苦手とする分野に「臨機応変さ」や「空気を読む」があげられていました。接遇はまさにその部分です。IT化が進んでも、人間だからこそできる美しい考えや行為を提供できるのです。

 メディカルコンシェルジュの接遇で、病院のイメージは変化してきました。思いのこもった対応は訪れるひとの気持ちをギュッとつかみます。口コミは悪い評判の場合あっという間に広がりますが、良い評判はじわじわと効力を発揮するものです。思いやりや小さな改善の積み重ねが、病院の評価として現れてくるでしょう。

 メディカルコンシェルジュは患者に笑顔を提供する存在として、また病院のブランディングにも欠かせない存在なのです。