転職を考え始めたら 知っておきたい「退職金」について
2022.10.19掲載
就職・転職情報お役立ち情報

あなたは、今自分が勤めている会社の退職金制度について知っていますか?

「退職」が自分の身に迫っているものでなければ、いざその時が来るまでは特に意識することもないのではないでしょうか?でも転職を考え始めたら、それはいずれ今勤めている会社を辞めるということ。それに伴って「退職金」が発生します。

 

退職金は、会社を退職する時に支給されるものというイメージがありますが、その細かい内容は企業によってかなり異なっているのが実情です。

転職に伴う引っ越しや、活動に際しての交通費など、何かしらお金がかかることもある転職活動。自分がいざ会社を退職する時に、実際にどのくらいの金額を受け取ることができるのか、いつ受け取ることができるのか、ということが把握できているだけでも安心度合いが変わってくるとは思いませんか?

 

そこで今回は、退職金制度の大まかな仕組みや退職金の相場、その算出方法など、転職前に事前に知っておきたい退職金の基礎知識をご紹介していきます。

 

 

■退職金制度にはどのようなものがある?

ひとくちに「退職金制度」といっても、その仕組みは様々です。企業から直接支給をされる「退職金」としては大まかに以下のように分けることができます。

退職金制度

  • 退職一時金制度

会社を退職する際に全ての退職金を一括でまとめて受け取ることができる制度です。

勤続年数や役職に応じて額が決定されることが多いようです。企業ごとの退職金規定

に沿って支払われ、規定の変更などがない限りは支払いが確約されています。

企業には退職金の積立を行う義務はありません。しかし、事前に第3者機関にて積立を行っている場合もあります。退職一時金制度をとっていた企業が、最近では後述の確定給付企業年金制度などへ移行するという例もあるようです。

 

  • 確定給付企業年金制度(DB)

「確定給付企業年金制度」(Defined Benefit Plan/略してDB)は、退職一時金制度の

ように一括で受け取るのではなく、年金として一定額が一定期間、または生涯に渡り支給される制度です。企業側と従業員側が将来受け取る給付額を決めた上で掛け金を拠出していくという仕組みのため、運用成果に関わらず決められた額を将来受け取ることができます。会社とは別の法人格を持つ企業年金基金を設立し、年金資金の管理・運用・給付などを行う「基金型」と、信託会社や生命保険会社などと契約し、管理・運営・給付を行う「規約型」とに分けることができます。

 

  • 企業型確定拠出年金制度(DC)

将来の給付額が決まっている確定給付企業年金制度に対して、こちらの「企業型確定拠出年金制度」(Defined Contribution Plan/略してDC)は、運用次第で給付額が変わる制度です。企業が退職金制度に基づき毎月一定の掛け金を拠出し、それを企業または従業員自ら運用を行います。60歳になるまでは原則として引き出すことはできません。将来受け取ることのできる額が運用成果によって変わってくるため、運用に関する知識がある程度求められるという特徴もあります。

 

場合によっては、これら確定給付企業年金制度や企業型確定拠出年金制度などの年金制度と退職一時金制度を併用して退職金を受け取ることも可能です。

 

退職金共済

このような「退職金」とは別に、「退職金共済」の制度をとる企業もあります。退職金共済には商工会議所を通じて支払われる「特定退職金共済」や、中小企業退職金共済事業本部(中退共)という組織が運用する「中小企業退職金共済」など、様々な種類があります。

事業主がこれらの共済組織に入り、共済制度を通じて退職金が直接退職者に支払われる仕組みです。加入者は16種類の掛金の中からひとつを選び毎月納付し、退職する際にはそれまでの掛金から算出された「基本退職金」を受け取ります。運用の利回りが予定を上回った場合には、これに加えて「付加退職金」も支給されます。退職金は一時金としてまとめて受け取ることも、年金のように定期的に一定額を受け取ることも可能です。

 

退職金共済は、企業が直接支払う制度とは異なり、万が一会社の経営状況が悪化したりするようなことがあっても、積み立てた分は必ず支給されるという安心感があります。

ただし、制度によっては積み立て額が少額で、思っていたほどの退職金が手に入らないという場合もあるようです。

 

 

■退職金制度自体がない企業もある

退職金制度は、それぞれの企業が自由に設定することができる制度です。そのため、そもそも退職金制度を定めていない企業もあります。厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、一時金・年金に関わらず退職金制度のある企業は全体の8割ほどとなっています。

つまり、約2割の企業には退職金制度そのものがないということです。また、従業員数が多く規模が大きい企業ほど退職金制度の導入率は高くなる傾向があります。

 

退職金制度のない企業の中には、退職時にまとまった額を支給しない代わりに、退職金を前払いする形で毎月の給与に上乗せしているという場合もあるようです。しかし、自分の勤務先が退職金制度を導入していないケースでは、転職先が決まっていないまま会社を退職する場合、次の就職先が決まるまでは、生活費などの面でまとまった額のお金が支給されないというのはやはり心細いのものではないでしょうか。もちろん、失業保険の基本手当を受け取ることもできますが、退職金が支給される場合よりもさらに入念に転職にあたって計画的に行動する必要が生じてくるといえるでしょう。

 

退職金が支給される場合にはその旨が明示されていますので、転職にあたっては事前に就業規則や退職金規定などを確認してみるとよいでしょう。また、給与明細をチェックしてみると、社員負担がある退職金制度を導入している場合は「退職金掛け金」や「確定給付掛け金」などの記載があるはずです。事前に積極的に情報収集して理解を深めておけば、いざ退職する時に慌てずにすみそうです。

■退職金制度はあるのに支給されないケースも

いくら企業側が退職金制度を導入していたとしても、就業規則に定めた条件を満たしていなければ退職金を受け取ることができないケースもあります。問題を起こして会社を懲戒解雇された場合は当然ながら支給されることはありませんが、見落としがちなのが、年次が浅く退職金制度に定める就業年数に達していない場合です。

また、転職などの「自己都合退職」では在職期間が一定期間に達していないと退職金の支給が認められない場合もあるようです。就職してみたもののやっぱりこの仕事はあまり向いてないかも、と数年も経たないうちにすぐ転職を決めてしまう場合は退職金はほぼ「無いようなもの」と考えておいても良いかもしれません。

 

他にも、会社の就業規則に同業他社への転職を制限する文言が記載されているにも関わらず、明らかに反してしまっているとして後に退職金を返還するよう求められたり、訴訟を起こされてしまったりというケースも耳にします。転職後にこのような事態に陥らないためにも、事前の情報収集は必須だといえそうです。

 

一方、会社が倒産してしまった、または経営が悪化した、などの理由により、制度は導入されていたのに退職金が支給されないというケースもあります。この場合は、労働基準監督署および独立行政法人労働者健康安全機構で実施している「未払賃金立替払制度」を利用することができますので、泣き寝入りする必要はありません。

企業側は、例え退職金制度があっても、従業員が退職金規定で定められた支給要件を満たしていない場合には、退職金を支払う必要はありません。しかしながら、支給要件が同じ別の従業員には退職金の支給があったのに、なぜか自分にだけは支払われていないなど、未払いの理由がはっきりしなかったり納得できないようなもの、また明らかな差別によるものなどの場合には、厚生労働省 労働局「労働紛争解決制度」の紛争調整委員会を通じて会社側と話し合うこともできますので、このような場合も決して退職金を泣く泣く諦めるという必要はありません。

■退職金の相場はいくら?

退職金制度には明確な法律などが定められていないため、制度だけでなくその金額の算出方法も企業によって全く異なります。多くの場合は勤続年数や退職時の基本給与や役職、退職事由によって算出されます。

 

先ほどの厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」によると、勤続20年以上かつ45歳以上の大学・大学院卒者の定年退職時の平均退職金給付額は1,983万円となっています。

高卒者の場合は1,618万円となっていて、最終学歴だけを比較しても支給額が違っていることが分かります。

退職事由で比較すると、大学・大学院卒者が会社都合退職の場合は2,156万円、自己都合退職では1,519万円と、退職の理由によってかなり支給額に開きがあることも分かります。

転職する場合の例では、例えば勤続5年の大卒社員が自己都合退職をする際の退職金の相場は大企業の場合は65万円ほど、中小企業だと44万円ほどです。高卒社員の場合は大企業で52万円、中小企業で32万円ほどが相場のようです。

 

一般的には勤続年数が10年頃に100万円前後となり、その後10年を超えたころから徐々に金額の上昇率が上がっていき、大企業の場合は、勤続25~30年ほどになると1,000万円を超えることが多いようです。このように見てくると、勤続年数5年ほどであれば、給与の2~3か月分ほどのある程度まとまった額の退職金を受け取ることができるといえそうなので、退職後に転職活動を行う場合でも当面の生活費を補うことはできそうです。

■退職金はいつ支給される?

退職金の受け取りのタイミングも、特に具体的に定められていないため企業により様々です。企業の担当者は、社員の退職が決まってから規定に沿って書類の作成や入金手続きなどを進めていくため、ある程度の時間がかかります。退職日にタイミングよく退職金も受け取ることができる、ということはありません。退職から1~2カ月程度経ってからというのが一般的なようですが、中には半年ほどかかる例もあるようです。

 

転職を見据えての退職で、まだ次の就職先が決まっていない場合は特にどのタイミングで受け取ることができるかは気になるところです。そのため、事前に就業規則や退職金規定などで退職金が入金されるタイミングを確認しておくと安心です。

ただし、退職金の支給日が明確に定められているにも関わらず支給されない場合は、対処が必要です。退職金が「支給されていない」という旨を伝えた後、7日以内に支払われない場合は会社側の違法行為となります。会社の担当者へ問い合わせても一向に支給されない場合などは、ためらわず労働基準監督署へ問い合わせるなど、対応することをおすすめします。

■退職金に税金はかかる?

退職金を受け取るに当たってもうひとつ気になるのが「税金」です。退職金をどのような形で受け取るかによって、徴収のされ方も異なります。

一時金で受け取る場合

「退職一時金」として受け取る場合は一度にまとまった額を受け取るため、それなりに税金がかかる可能性もありますが、過剰に徴収されることのないよう配慮されているようです。退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出することで退職所得控除が適用され、他の所得と分離して課税されることになります。

勤続年数に応じた控除額が適用され、年数が長くなるほど控除額が増えていきます。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば会社が手続きを行ってくれるため、退職金を受け取った時点で自身が税に関する申請を行う必要はありません。

年金で受け取る場合

確定拠出年金や確定給付年金などの形で受け取る場合は、他の所得と合算して計算されますので、毎月の給与と同様に所得税が課せられます。ただし、毎月の掛け金は所得控除の対象となるため、所得税や住民税などの負担が軽減されることもあります。

■退職金の算出方法は?

退職金制度を導入している企業の多くが退職金に関する規定を設けています。退職金の算出方法も企業により異なりますが、算定方法が記載されていることが多いため、自身が退職するとしたらだいたいどの程度の退職金を受けとることができるかを事前に計算することもできます。

会社への貢献度などに関係なく、単純に勤続年数のみに比例して金額が決定されるタイプの算出法を取っている企業では、勤続年数が長ければ長いほど受け取れる金額も多くなります。その場合は、勤続年数が何年で何十万円、というように退職金規定に具体的に勤続年数ごとの支給額が記載されていることが多いようです。

また、基本給に連動したり、役職などに応じて設定された基礎金額に連動して算出する方法を取っている企業もあります。

一般的には、退職時の基本給や基礎金額に支給率(勤続年数により変動)と退職事由係数を掛けて計算されます。支給率や退職事由係数も企業によって異なるものの、勤続係数が長いほうが、もちろん金額は高くなる傾向があります。

 

この他にも、最近では会社への貢献度を考慮して算出する成果報酬型を取っている企業が増えているようです。これは、前述の算出方法とは異なり、将来の退職金を確定はせず、その時点の役職や個人の能力に応じて企業側が掛け金を設定していくという制度です。

勤続年数が短くても、自身の能力が評価されればそれ相応の退職金を受け取ることができる可能性がある一方で、勤続年数が長いにも関わらず評価を得られない場合は金額も少なくなってしまうという特徴があります。

また、単なる成果主義だけではなく、実績と勤続年数の両方の側面から退職金を算出するポイント制を導入している企業もあります。勤続年数や貢献度など、企業が評価する要素にポイントを設定し、これらを足し合わせた「退職金ポイント」に ポイント単価 と 退職事由係数を掛け合わせて算出されます。ポイント制退職金制度のメリットは、実績と勤続年数の両方による評価なので、どちらかが優れていれば、ある程度の退職金が保証されるということです。

■転職すれば減ってしまう退職金

このように算出方法を見てみても、退職金の額は一般的には勤続年数によって変化する

ケースが多いということが分かります。仮に同じ役職だったり、同じ評価を受けた人であっても、勤続年数が加味される限りは、転職してきた人よりも長らく勤め続けてきた人の方が金額は高くなる、ということです。

大学・大学院卒の社員が定年退職時に受け取る退職金の平均額が2000万円前後に及ぶということからも、退職金制度は転職が珍しいものであり、終身雇用が一般的とされていた時代にはピッタリの制度であったということができるかもしれません。

 

しかし、勤続年数が3年未満の場合、退職金がほとんどもらえないケースもあり、人生の中で複数回転職をすることがもはや珍しいことではなくなった現代の状況にはあまりマッチしているとはいえないでしょう。転職をすればするほど、まとまった額の退職金を手に入れることが難しくなってしまうからです。

もはや転職が「当たり前」となったこれらの状況を踏まえると、前述のように退職一時金制度から確定給付企業年金や確定拠出年金といった年金制度へ移行する企業が増えていることも頷けます。

 

転職により退職金が減ってしまう人は、これらの年金型の退職金制度を活用することをオススメします。これらの制度には「ポータビリティ」と言って、退職金を転職先に持ち運んだり、公的年金に上乗せして受給することができる仕組みがあるからです。大企業から同規模の企業への転職であれば、転職前の企業で適用されていた年金制度と同じタイプのものがあり、そのまま持ち運ぶことが可能です。

転職先の年金制度が前職のものとは異なるタイプのものである場合は、そのまま持ち運ぶことはできませんが、例えば転職先の企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)に移管し、転職後の積立額と一緒に自分で運用を行っていくという方法もあります。

以前の記事「『扶養内で働く』とはどういうこと?『103万の壁』と『130万の壁』について解説」でもご紹介したように、運用益は非課税のため、コスト面から考えてもお得だといえるでしょう。確定拠出年金はこのように転職を重ねても持ち運びがしやすい一方、少なくとも60歳になるまでは引き出すことができないという点には注意が必要です。

退職後の転職先が決まっていな場合は、当面の生活を支えるために退職金を活用することも珍しくはないでしょう。しかし、既に次の就職先が決定している場合は、そこそこの金額の退職一時金を受け取って生活費として使ってしまうというよりは、さらにその先の将来を見据えて、老後資金として引き継げるためにこのような年金制度を活用していくことをおすすめします。そうすれば、終身雇用ではなく転職を経ていたとしても定年時にはある程度まとまった金額を資金として準備しておくことができるからです。

退職金を持ち運ぶことを考えている場合には、退職金を受け取る前に現在の勤務先などに事前にその意思を伝えなくてはなりません。そのため、繰り返しになりますが事前に十分な情報収集を行い、どのような方法をとるかをしっかりと検討しておく必要があるといえるでしょう。

■まとめ

退職金制度といっても、企業によりその実態は様々であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。「会社を退職する人に対して一定の金額を支給する」制度であるといっても、その算出方法から受け取り方に至るまで、各企業が独自の規定を設定しています。

退職金制度の概要が分かったところで、まずは自分が現在勤めている会社の退職金制度を確認し、実際に転職を視野に退職するとなるとどのような形でどれだけの額が支給されるのかを具体的に把握してみましょう。

その上で、現在の貯金額や転職にまつわる費用などと照らし合わせながら、自身の転職活動を改めて振り返ってみるとよいのではないでしょうか。

現在の職場で働きながら、仕事の合間に転職活動をしていくのか、もしくは一度退職をしてから改めて転職活動を行っても当面の生活費やその先の老後資金などに影響は出てこないのかどうか、具体的な退職金の額が明らかになれば転職までのスケジュールもより明確に定まってくるといえるでしょう。

 

ご紹介したように、定年まで勤めあげた時の退職金の平均額はかなり大きな額になるため、このまま軽い気持ちで転職に踏み切ってしまってはもったいないのではないか、という気持ちになることもあるかもしれません。しかし、転職により退職金の額自体は減ってしまっても、仕事を変えたことで年収がアップし、長い目で見た時の生涯賃金を大幅に増やすことができるという可能性もあります。また、職場のトラブルから離れることができたり、キャリアアップができたり、日々の業務にやりがいを感じることができるなど、高額な退職金を得るということとは別のメリットを得ることもできるでしょう。このようなことからも、転職を様々な視点から捉えて、この先の自分にとって一番何が必要なのかを天秤にかけながら、まずは一つずつ、選択を重ねていってみてはよいのではないでしょうか。

 

<参考>

厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況 4 退職給付(一時金・年金)の支給

実態」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaiyou04.pdf

 

三菱UFJ信託銀行 「退職金制度は4種類!各制度の特徴や金額・受け取り方・税金を解説」

https://magazine.tr.mufg.jp/90812

 

エン転職 「退職金の平均相場や計算方法とは?勤続年数や学歴によっていくらもらえる?」

https://employment.en-japan.com/tenshoku-daijiten/40837/

 

リクルートダイレクトスカウト 「【社労士監修】転職する前に知っておきたい退職金制度(退職一時金・退職年金)」

https://directscout.recruit.co.jp/contents/article/4683/

 

リクナビNEXT 「転職すると退職金で損をする?退職金について知っておくとよいこと」

https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/archives/22780/

 

東洋経済オンライン 「30・40代転職希望者は注意!『年金の移管問題』」

https://toyokeizai.net/articles/-/258040?page=2