人々の食生活を支える栄養の専門家。
栄養士はさまざまな施設で栄養指導・献立作成・調理をおこなう専門職です。
栄養士の発祥は日本であり、栄養士(管理栄養士含む)の就業者数は2015年時点で
11.4万人、厚生労働省の調べによると栄養士の免許交付数は毎年約2万ずつ増加して
おり、2019年には累計約111.5万となっています。
◎栄養士と管理栄養士の違い
栄養士と管理栄養士では業務範囲が異なり、栄養士は主に健康な人へ栄養指導や
給食管理をおこなうのに対し、管理栄養士は入院患者や特定保健指導で食生活の
改善が必要と判断された人向けの栄養指導、病院・介護施設などで特別な配慮が
必要な人向けの給食管理もおこないます。
また、栄養士と管理栄養士では免許の取得方法も異なります。
栄養士が養成施設を修了し都道府県知事から免許を受けるのに対し、管理栄養士は
栄養士免許を取得したうえで国家試験に合格し、厚生労働大臣から免許を受けます。
◎栄養士の仕事内容
◆栄養指導
健康な人を対象に食生活のアドバイスをおこないます。同じ健康な人でも、
年齢や生活習慣はそれぞれ異なり、栄養士は一人ひとりに合わせて必要な
栄養素やカロリーをふまえた食事内容を指導する。
◆給食管理(献立作成・調理)
一人ひとりに必要な栄養を計算しながら、献立を考えて調理をします。
保育所で小さな子ども向けの食事を調理することもあれば、介護施設で
高齢者向けの食事を調理することもあります。
アレルギー食への対応や、食べやすい大きさ・軟らかさに調理することも大切。
また学校や介護施設、保育所、幼稚園などでは、季節行事に合わせたメニューや
郷土料理など、楽しく食べるための工夫も求められます。
◆食育
子どもたちの成長をサポートする学校や保育所などでは、教員や保育士と共に
食育を推進します。
栄養士は簡単な調理や野菜の収穫体験などを企画・実施しながら、子どもたちが
食に関する正しい知識や望ましい食習慣を身に付けられるよう指導します。
◎栄養士の勤務先
2020年度に養成施設を卒業した栄養士の就職先は、
・病院
・児童福祉施設
それぞれ21.7%と一番多く
・給食会社等、介護保険施設
と続きます。
管理栄養士の就職先と比べると、患者さんの栄養管理が必要な病院、
特定保健指導をおこなう保健事業など、専門的な業務が求められる職場の割合が
少なくなっており、児童福祉施設や学校といった献立作成・調理がメインとなる
職場の割合は高くなっています。
◆病院
管理栄養士が患者さんの栄養管理・指導をメインにおこなうのに対し、
栄養士は主に病院食の調理や盛り付け、提供などのフードサービスをおこなう。
献立は医師からの食事療法の指示書である食事箋に従って用意されます。
◆保育所・幼稚園・学校
主に給食管理をおこないます。学校で献立作成や調理をおこなう栄養士は
学校栄養職員と呼ばれ、学校によっては給食だよりの作成も担当します。
給食だよりでは食材の栄養価や行事食の紹介、食中毒に関する情報提供・
注意喚起などをおこないます。
保育所では調乳、おやつの調理も業務の一つです。
園によっては定期的に園児のもとを訪れ、食べている様子を確認したり、
保育士と一緒に園児の食事をサポートしたりします。
園の規模や設備によって調理環境が異なるため、応募時には求人や園見学でよく
確認することが大事です。
◆介護施設
利用者さん一人ひとりの状況や要介護度に合わせた食事を提供します。
例えば噛む力が弱い人向けに食材を軟らかくした軟食、噛み砕く力が弱い人向けの
きざみ食、噛む力が無く飲み込む力がある人向けのペースト食など、さまざまな
形態に対応します。
◆給食会社
給食会社(給食受託会社)では、病院、介護施設、保育所、幼稚園などと契約し、
給食業務を提供します。
配属先によっては、施設に直接雇用されている栄養士や調理スタッフと協力して
業務をおこなうこともあります。例えば献立作成は施設側の栄養士が担当し、
食事摂取量を把握するための残食量チェックは給食会社の栄養士が担当するなど、
業務範囲は契約内容に応じて異なります。
◎栄養士の休日
勤務先によって異なりますが、
幼稚園・学校などでは基本的に土日祝休みとなり、長期休暇期間も休みとなることが
一般的です。
一方で病院や介護施設ではシフト休が多く、週休2日でも曜日が固定されていない
場合や、4週8休となる場合があります。
◎栄養士の将来性
給食を提供する施設を中心に、栄養士はさまざまな場所で活躍しており、人々の
健康意識が向上していることから、今後も栄養士のニーズは高まると考えられます。
栄養士の特徴の一つは、養成施設の修了で免許を受けられることです。
学んだことをすぐに現場で実践することができ、専門的な業務へ活動の幅を広げたい
場合には、実務経験を積んで管理栄養士となることも可能です。
さらに管理栄養士となったあとも、特定の分野に特化して強みを深めるなど、
キャリアアップの選択肢が豊富にあります。