看護師として既にある程度の経験がある人が、より良い職場を求めて転職を考え始めた場合、今の職場よりも給与が少しでも高い所へ転職したいと考えるのは当然のことでしょう。
看護師の給与も、他の業界と同じく勤続年数と共にアップしていく傾向があります。
そのため、転職をした場合でも「転職前の経験年数に、転職後の経験年数が加算されていくはず」と疑うことなく考える人もいるのではないでしょうか。
しかし、実際のところ必ずしもそうとは限りません。
そこで今回は、転職をする際にぜひ気をつけておきたい「経験年数」の扱いについてご紹介していきます。
■病院や施設によって異なる「経験年数」の定義
看護業界に限らず、一般的に中途採用の場合は全く異なる業種への転職でない限り、それまでの経験やスキルがある程度加味されるため、新卒と同じ待遇で転職ということはあまりありません。
看護業界でも同様に、求人票などを見ていると「経験加算」という言葉があるように、看護師としての経験に応じて基本給が上がるようになっています。
簡単にいえば、例えば看護師5年目で転職した場合は「看護師としての経験が4年ある」とみなされます。
ここで注意しておきたいのが、この経験年数の定義が病院や施設、またはその分野などによって全く異なっている、ということです。
今までに看護師として働いてきた年数だけが単純にカウントされるのではなく、それが
「臨床現場またはクリニック、介護施設か」
「正看護師か准看護師か」
「常勤か派遣・パートか」
など、転職先で求められるスキルや分野により違ってくるのです。
よくみられるのは、どこかの病院の病棟勤務へ転職をする場合、現職の病棟での勤務経験はそのまま経験年数としてカウントされるものの、クリニックや介護施設での勤務経験は1/2としてカウントされるというケースです。
このように、同じ「看護師」の転職であっても、今までと異なる形態や分野へ転職をする場合は、必ずしも実際の勤務年数が「経験年数」としてカウントされるとは限らないということを知っておいてほしいと思います。
日本看護協会が2012年に発表した「病院勤務の看護職の賃金に関する調査」によると、「中途採用する非管理職の看護師の経験年数に対する評価」について、実際に看護師のこれまでの経験年数を「すべて評価する」と回答した施設は46.0%にとどまり、約半数程度となっていました。
この調査結果が発表された10年前の段階でも、既に転職時や一旦離職して再度職に戻る場合などにこれまでの看護師経験が十分に評価されていない実態が指摘されており、明確な定義を示して看護師としての「キャリアに応じた」仕組み作りに取り組むことの必要性が唱えられていました。
■転職が決まる前に事前確認を
とはいえ、看護師としての経験がどのようにカウントされるかということは、依然として転職先によって変動がある、というのが現実のようです。
介護施設に勤務していた看護師がそのまま別の介護施設へ転職する場合は、これまでの勤務年数全てを加算してもらえる可能性が高い一方で、病棟勤務への転職を希望した場合には経験年数の全てをカウントしてもらうことができない事態も起こり得るということです。
今までに自分が培ってきた経験は大事な財産として無駄にしたくはないものです。
ですので、転職を考え始めた場合、あらかじめ転職先の経験加算がどのようなものかを確認することをオススメします。
求人票の情報などからだけでは詳しく分からない場合は、看護師専門の転職エージェントや転職支援サイトなどを賢く活用して相談してみるのも良いでしょう。
これまでの自分の経験を糧に給与アップを望める転職先をみつけてみて下さいね。
<参考サイト>
・日本看護協会 「看護職の給与の調査・データ」
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/chingin/data/index.html