新卒の就職活動でよく耳にする「就職フェア※」。
介護福祉業界でも決して珍しいものではなく、介護・福祉・保育など様々な分野にフォーカスした催しが行われています。
中でも、保育の仕事に就くことを希望している人を対象にした就職フェアは毎年多く開催されており、人材の確保に悩まされる保育業界では採用活動につながる貴重な機会のひとつとなっています。
近年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、フェアの中止や延期を余儀なくされることも多くありましたが、近頃は来場人数の制限やマスク着用の徹底、検温や換気の実施などの感染対策を行いながら開催されるようになってきています。
そこで今回は、採用の貴重な場としての役割を果たす「就職フェア」についてご紹介していきます。
※「就職セミナー」や「合同企業説明会」等、その内容により名称も多少異なります。
■保育士の「就職フェア」とはどんなもの?
保育士の「就職フェア」とは、主に保育士資格を取得している(または取得の見込みがある)人を対象にした合同説明会のようなものです。
保育園や保育園を運営する企業・法人が一堂に会し、それぞれのブースで自分たちの施設の特色や保育方針、労働条件などを来場者に説明します。
このような出展事業者の説明だけでなく、この他にも就職・転職に役立つ講演会やワークショップ、採用担当者からのプレゼンテーション等の機会を設けている場合もあります。
新卒採用者のみを対象としたものもあれば、転職を考えている現役保育士、別の業種からの転職を考えている人など、「これから保育士として働きたいと考えているすべての人」を対象としているものもあります。
就職フェアは、主に自治体・保育士専門求人サイト・転職エージェント等により、首都圏や人が集まりやすい全国の大都市を中心に通年で開催されていますが、3月~9月にかけてもっとも頻繁に開催されているようです。
特に、東京で開催されるものは実施回数が多いだけでなく、大手の企業や法人等も多数参加しているという印象があります。
参加費や入場料は無料のものが多く、事前に来場予約をすることで予約特典をもらえたり、来場者に先着でノベルティを配布したりするイベントも珍しくなく、就職フェア自体に魅力を感じて来場してもらうための工夫が凝らされています。
参加にあたって自身の履歴書などを持参する必要はなく、出展事業者の資料も持ち帰ることができるため、求職者側にとっては気楽に情報収集をすることができる機会となっています。
■採用側のメリットとは?
出展事業者、つまり保育士を採用する側にとって就職フェアの最大のメリットは、「採用の幅を広げられる」ことです。
もちろん、従来の採用活動でも人材を確保することは可能です。
しかし、フェアに出展することにより「自園の存在そのものを知らなかった」という人や「自園のことは知っていたけれど、採用情報までは把握していなかった」という人の目にとまることができます。
存在を知ってもらい興味を持ってもらうことで、これまでの採用活動ですくいそびれていた人材の採用につなげていくことができるようになります。
さらに、ウェブサイトや求人票の文面からでは伝えきれない自園の魅力や雰囲気、保育方針等を関係者が直接口頭でアピールすることができる貴重な場でもあります。
待遇や労働条件についてもその場で質問を受けることができるので、求職者の納得感も得やすいというメリットもあります。
出展の機会を上手に活用し、求職者と積極的にコミュニケーションを図ることで、出展後の園見学やその後の面接などに進めていけば、確実に採用へとつなげていくことができるのではないでしょうか。
このように、採用側にとって大きなメリットのある就職フェアですが、はじめは出展すること自体、ハードルが高いものだと感じてしまうかもしれません。
出展を考え始めたら、フェアの主催者に概要や開催スケジュールを詳しく問い合わせてみるとよいでしょう。
出展準備や当日の立ち回りなど、ある程度軌道に乗るまでは大変かもしれませんが、回数を重ねてスムーズにこなせるようになっていけば、いずれ「一度に多くの求職者へ自園を直接アピールすることができる」とても効率的なイベントであることが実感できるようになるでしょう。
■求職者側のメリットとは?
採用側にとって、就職フェアが「ウェブサイトや求人票の文面からでは伝えきれない自園の魅力や雰囲気、保育方針等を関係者が直接口頭でアピールすることができる貴重な場でもある」と述べましたが、これは求職する側にとっても同様です。
保育士として働きたいと考えている人がまず始めにチェックするのは、保育園の求人票やホームページです。
しかし、それだけではどうしても十分な情報を得ることはできません。
かといって、本当にその園を希望するかも分かっていない段階で個別に連絡を取って質問をするのは気が引けてしまいます。
そんな時に、面接よりもよりアットホームな雰囲気の中で直接園の関係者と話ができるのは、求職者にとってはこの上ない機会となります。
さらに、就職フェアには多数の保育園や保育園を運営する法人・企業が参加しています。
自身の求職活動の中では見つけることのできなかった園と出会う可能性もあり、選択肢の幅を広げることもできるかもしれませんし、今まで候補にあげていなかった園でも、ブースでの出展内容をきっかけに魅力を感じるようになることもあるかもしれません。
何より、園の担当者と直接コミュニケーションをとることで、各園の保育士同士のやりとりも身近に見ることができ、園の雰囲気や保育士の人柄などをより身近に感じ取ることができますし、踏み込んだ相談や質問をしてみることで様々な情報を収集することができます。
■まとめ
就職フェアでは、一日に多くの保育園の話を効率的に聞けるだけでなく、複数の保育園の情報を比較検討しやすいため、客観的に自分の希望する条件を整理することもできます。
参加費がかからないだけでなく、フェア会場への入退場のタイミングも各自に任されているため、まだそこまではっきりとした就職希望先が決まっていない人でも、気軽な情報収集として参加しやすいという点も大きなポイントとなります。
近年、新型コロナウイルスの感染拡大により、園への見学や実習なども従来通りには行われず、ある程度制限されてしまうこともある中、就職フェアは実際の園の雰囲気を体感してもらえる場として、採用側・求職側のどちらにとっても大変有意義であると考えられます。
早いタイミングで気軽に情報収集を行っていき、できるだけ多くの園やそれを運営する企業・法人の雰囲気や保育方針を知ることで、自身の働き方のイメージをより具体的に持ちやすくなるでしょう。
さらに、実際に就職する前に具体的なイメージを持ち、待遇や条件面についても詳しく情報を得ておけば、いざ働き始めてみてからも「こんなはずじゃなかった」「思っていたのと違った」と落胆してしまうことを防ぐことにつながります。
そうした点からも、就職フェアは採用側・求職側にとって、お互いを知るためのより良い機会といえるでしょう。